この世界の片隅に~Kono Sekai no Katasumi ni

物語はとてもとてもやわらかく、ゆっくりなようでテンポよく進んで、

主人公のすずと一緒に、その時代に生きているような感覚になるくらい入りこんでしまった。

あまりに平凡な日常が過ぎていく中で、突然突きつけられる戦争という現実に、どうしようもなく、気づいたら涙がとまらなかった。それでも、悩み苦しみながらも、生きていくすずと、家族たちが、強くて、優しくて、言葉にならない。

 

今まで見てきた戦時中の映画は、悲しくてつらすぎて、どこか現実味がなく、遠い存在のように受け止めてしまうものが多かったけれど、この物語はアニメーションだけど、実写よりも、時代背景や、登場人物の気持ちなど、すべてがリアルだった。説明がない描写や表現が多いぶん、物語にそれ以上の深みがでている。だって生きている今この時代も、ナレーションや説明などない。見て感じる、察する、想像する、その力が必要かもしれない。だから子供には楽しい映画にすら思えてしまうだろう。そのくらい、絵として、死体や血などのつらい描写が少ない。でも、事実をわかってしまうと、本当につらい。

 

人としてこの映画は見てほしい。

私の中のいろんな感情が全部引き出された、すばらしい映画でした。